街の臭い

10/10
前へ
/10ページ
次へ
 ホロ酔いで、店を出た俺達を容赦なく寒気が襲う。  ミナミの街の灯りが、ぼんやりと光っている。  まだ微かに、人の生活臭が残る街──  生きる事の本質が街角にまだ辛うじて漂っている。  再会した旧友達は、今もこの街で泥臭くも腐らずに必死で生きている。  俺は、自分がなぜこの街を好きだったのか初めてわかった様な気がした。  「おい! お前、今日、全然、オモロイ事、言うてへんやないかぇ! 」  ツヨシがこてこての口調で言う  「ほんまやで! しょうもないわぁ! 」  キヨコもそう言って笑う。  「今度、会う時は俺が笑わせるよ…… 」  ネタはある。  俺が店を潰してしまい自殺まで考えていた事だ。  少しハード過ぎるだろうか?  もう一度、必ず大阪に来てその時はツヨシとキヨコを俺が笑わせよう──  そう思うと死ぬ気等、失せていた。  遠くで通天閣のネオンが間の抜けたテンポで点滅していた。 了
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加