8人が本棚に入れています
本棚に追加
最期に大阪の街が見たくなった
くすんでいるが、賑やかな街の喧騒が溶け込んだ大気。
関西弁のなつかしい響き。
街中を忙しなく走り回るパトカーのサイレンの音。
切り取った様な大阪の一風景が、俺の胸に去来する。
学生の時に全身で味わったあの街の空気が、生暖かい湯気を放ちながら
俺の脳裡に甦る。
生きながらにして死んでしまった器官や神経に、僅かだが命が宿った。
そして
懐かしい古い友人達の顔──
もう枯れ果てたと思っていた涙が頬を伝う。
最後に大阪の街を見ておこう。
そして俺は、自分のこの腐り果てた人生に終止符を打つのだ。
午後になり俺は、僅かに残った金で切符を買い新大阪行きの新幹線に乗った。
・
最初のコメントを投稿しよう!