街の臭い

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 十数年振りに見る新大阪駅は、随分と変わっていた。  新大阪駅で普通列車に乗り換えると梅田の街が、すぐに見えてくる。  キタの街にもかつての面影はない。  汚いがどこか愛着の沸く町並みは消え果て  日本の大都市ならどこでも目にする様なありきたりな風景が、目の前に広がっている。  学生の時に嗅いだビルの壁や、御堂筋のアスファルトの隙間から立ち上っていた生活の臭いがどこにもない。  街に住む雑多な人間達の生活の迫力……  あの頃にあった生活の臨場感が、今のキタの街からは消え失せてしまっていた。  臭いのない幾本もの鉄の塔が、他の都市と同じ様に冷たく聳え立っている。  何か少しさみしくなり地下鉄に乗り換え、通っていた学校がある難波に向かった。  電車の中で、学生時代に仲が良かった奴らにメールを打つ。  やはり自分の人生にある決断を下す前に、あいつらに会ってはおきたい。  今夜、会わなければもう会える事はないだろう……  電車の中で聞く関西訛りが、昔を思い出させ俺の胸を締めつけた ・
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