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駅を出て十数年振りにミナミの街を歩く。
確かに薄まってはいる。
しかしこの賑やかなミナミの街には、まだかろうじて生活の臭いが微かに残っていた。
洗練されたキタの街と比べるとどこか薄汚い。
だが邂逅の旅をしている俺にとっては、それが何より嬉しかった
ぼんやりとミナミの街に立ち尽くす。
商店街を埋めつくす様に歩く人の群れ。
大声で飛び交うガラの悪い関西弁。
街に溶け出すお好み焼きや、たこ焼きの甘いソースの臭い。
何より雑多な人間達が織り成す生活の迫力が、この街にはまだ残っている。
それがただ嬉しく俺は、夜になるまでミナミの街を宛てもなく歩いた。
日が暮れるまでにメールを打った旧友達から、折り返しの電話が次々とかかってきた。
彼らは一人残らず申し合わせた様に第一声目で
「何しにきてん! 」
と言ってその後、豪快に笑った
あれよあれよと言う間に話しは進み、俺は彼らと夜、ミナミの街で酒を飲む事になっていた。
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