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テーブルの中央にある堀の中で、汚れた油が勢い良く音を立てる
串に刺されたパン粉まみれの豚肉が、その油の中で沈んだり浮いたりを繰り返す。
俺達は、卒業した美容学校の近くにある串カツ屋で再会した。
ツヨシとキヨコが何とか仕事の都合をつけて、俺に会いに此処へ駆けつけてくれていた。
連絡は、取り合っていたが二人に会うのは学校を卒業して以来だ
多忙を極める美容業界で三人とも生きているのだ。
そうなるのがむしろ普通である
十数年ぶりに会う彼らは、俺と同じく年を重ね二人とも顔つきがあの頃より深くそして厳しくなっていた。
それが社会で戦い抜いてきた事の証しであった。
串カツを食べながら、思い出話しに華を咲かせているとツヨシが少し神妙な顔で俺の顔を見る。
「お前の店、どないやねん? 儲かってんのか? 」
一瞬、胸が痛んだ。
「まぁ…… 適当にやってるよ 」
歯切れ悪く誤魔化す。
「…… ツヨシの店は、どうなんだ? うまく行ってるのかい? 」
何の気なしに聞くとツヨシの顔が、少し険しくなった。
「潰れてもうたわ…… 借金、背負ってもうて…… 今は、人の下についてまた出直しとんねん…… 」
会話が止まり、テーブルの中央の堀で串カツが揚がる渇いた音だけが耳に響く。
「…… やってもうた! ははは! 」
ツヨシが、笑い飛ばす。
「うちの店もやばいわぁ! …… ツヨシみたいになったらどないしよ! 」
キヨコもそう言って笑い出した
自分の恥や、直面している問題をネタにして笑い飛ばす。
久し振りに味わう大阪人、特有の気質に俺の口許も緩んだ。
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