街の臭い

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 積極的な人間が、どこまでも称賛される。  それが大阪の土地柄だった。  懐かしい旧友との会話と、串カツの味が俺にそれを思い出させた  自分の事をネタにし、場を和ませる彼らはサービス精神に溢れ  いつも積極的だった。  俺は、何と消極的になっていたんだろう……  ツヨシの様に店を潰しても、どこかの美容院でもう一度、雇ってもらいやり直せばいいじゃないか……  でも……  下らないプライドが、俺の中に充満する。  そのプライドのせいで、自分の器や力量に不釣り合いな店を手にしてしまったんじゃなかったか……  痛みを伴った自問自答が俺の頭の中を巡り出す。  会話を適当に聞き流していた俺の肩をツヨシの手が叩く。  「かましたれやぁ! 」  ツヨシがなぜか大声で叫んだ。  意味もわからず目頭が熱くなる  俺の肩に触れているツヨシの手が妙に暖かかった。 ・
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