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夢を見た。
内容は全く覚えてないが、目が覚めると、胸の中に風船を入れたかのような圧迫感がある。眠った筈なのに疲れは取れてない。
まるで何かに責っ付かれているようだ。
その代わり、昨日の目眩と吐き気は嘘のように消えていた。
私は覚悟を決めた。
しかし、その覚悟はあっさりと肩透かしを喰らう事になる。彼がいつもの場所にいないだなんて、考えてみてもなかったのだ。
一気に押し寄せる空虚感。
確かに、彼が必ずここにいるだなんて確証はなかった。ただ、今までそれが当たり前になっていたので、何の疑問も持ってなかったのだ。
私は風船が萎んだように力の入らない身体を、いつも彼が座っているベンチに下ろすと、一つ溜め息を吐く。
その溜め息は、一瞬白く染まると、辺りの冷たい空気に霧散していった。
私はぼんやりとその様を見つめていた。そのうちに、私の瞼は重くなっていく。
私の意識は、周囲を白い靄に覆われた海の中にいた。そこに、誰かの足音が遠く近く響いてくる。その音は水を震わし、私をそこから掬い上げようとするかのようだ。
水面に浮かんだ私は目を開こうとするが、また微睡みの海に沈みそうになる。
ゆらり、ゆらり。
足音は、私の側で止まった。
そして、私を覗き込む人の気配。
私は今度こそ、重い瞼を持ち上げた。
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