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「ありがと」
彼女の話が途切れたところで、そう口にする。
『泣くほど、好きなんだ』
「そう、なの、……かな?」
そうして漸く、何があったのか話し始めた。
彼がいなくて落胆した事。
そして眠ってしまった事。
寝惚けているところを彼に見られた上に、抱き着いてしまった事。
慌てふためいた私は、落としたチョコレートをそのまま渡してしまった事。
抱き着いた事は夢だったのかも知れない。
だけど彼に触れた記憶は鮮明に残っている。
彼の体温を感じた。その時は、とても幸せだった。
だからそれを夢だと言ってしまうと、その感覚全てが嘘になってしまうと感じていた。
『そっか』
私が話し終えたと感じると、彼女は一言、そう口にした。そして、
『でも、フラれた訳じゃないんじゃん』
続けて、明るく言った。
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