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ゆらり、ゆらり。
微睡みの海。
岸辺に立つ人影。
私はゆっくりと浮かび上がると、その人影を見つめた。
それは彼の姿で、私に笑いかけてくれる。
私の胸には喜びが込み上げ、彼に腕を伸ばした。
――頭の片隅で、これは夢だと分かっていた。
それでも彼の温もりを感じる。
私は安堵を覚えると共に、「会いたかったの」、そう囁いていた。
最近、見る夢と言えばこればかりだ。
私はベッドから身体を起こすと、濡れた頬に手をやり、溜息を吐く。
バレンタインの翌日から、あの公園には行ってない。
行ける筈がない。
彼に会って、何を言えば良いのだろう。
あのチョコレートにしても、混乱した私が間違えて渡したと思っているかも知れない。
逆に、そう思っていてくれた方が良いとも思う。
だけど、どんなに考えても結論を得られる訳でもなく、また、どんなに考えても時間は過ぎていくばかりだ。
今日はホワイトデーだった。
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