バレンタインⅡ

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ゆらり、ゆらり。 微睡みの海。 岸辺に立つ人影。 私はゆっくりと浮かび上がると、その人影を見つめた。 それは彼の姿で、私に笑いかけてくれる。 私の胸には喜びが込み上げ、彼に腕を伸ばした。 ――頭の片隅で、これは夢だと分かっていた。 それでも彼の温もりを感じる。 私は安堵を覚えると共に、「会いたかったの」、そう囁いていた。 最近、見る夢と言えばこればかりだ。 私はベッドから身体を起こすと、濡れた頬に手をやり、溜息を吐く。 バレンタインの翌日から、あの公園には行ってない。 行ける筈がない。 彼に会って、何を言えば良いのだろう。 あのチョコレートにしても、混乱した私が間違えて渡したと思っているかも知れない。 逆に、そう思っていてくれた方が良いとも思う。 だけど、どんなに考えても結論を得られる訳でもなく、また、どんなに考えても時間は過ぎていくばかりだ。 今日はホワイトデーだった。
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