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「こんにちは」
彼が言う。
私は心を落ち着かせる為に、一度大きく息を吸い込み、吐き出した。そして、
「こんにちは」
と返す。
暫く、沈黙が続く。
私の耳には、周りの雑音は何も入らない。まるで時間が止まったかのようだ。
彼が、
「座ろうか?」
そう言い、再び全てが時を刻み始めた。
「あ、あの、先日はすみませんでした!」
「何が?」
「その、私、寝惚けちゃってて」
思い出すだけで恥ずかしい。
「気にしなくて良いよ」
「でも! あの、チョコレートは、私の、あの……」
勢いで口を開いたものの、次第に声が小さくなり、彼の顔も見れなくなっていく。
そして、気づけば私の視線は、自分の手元に向けられていた。
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