バレンタイン

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その彼氏と別れた後、社会人になるまでは、誰かと付き合うという事はなかった。 地元から離れた会社に入り、そんな青臭い記憶も薄れた頃、男性との付き合いを意識した事もある。しかし、その殆どが性的な意味しか持たず、すぐに破局を迎えた。その数も数えるしかない。 きっと私は、恋愛というものを理解する事はないのだろう。 そう思うと少し寂しい気もしたが、仕方ないという諦めの気持ちの方が強いのだった。 会社と自分のアパートを往復するだけの毎日。時折、同期の女の子達や会社の同僚と飲みに行く事もあったが、最近ではその回数も減っている。 同期の女の子達は結婚を臭わせ始め、または、既に家庭に入って幸せそうな表情を見せていたからだ。そこに私の入る隙はない。 学生時代の友達からは、二人目が産まれたという報告があった。 人の幸せを聞くのは嬉しい。 でも今回は、それに引きずられる事はないだろう。 恋愛が分からない私が、永遠の愛を誓える筈がないのだから。
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