バレンタイン

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それなのに最近、私の心は不調を来たしているのだ。 お昼を一緒に食べる同期の女の子も減り、私は一人で食事する事が増えていた。 そうなると、職場で一人で食べる私に気を遣う人がいたりするし、だからといって外食も嫌だった。 結果、私は会社の近くの公園で食事を済ませ、後はそこで本を読んだりして時間を潰すようになった。 そこに彼がいた。 私より少し年上だろうか、落ち着いて、大人びた雰囲気を持つ男性。眼鏡で表情が分かりにくいが、整った顔立ちだろう事は想像に難くなかった。 彼が座るのは、いつも同じベンチの同じ場所。私が行くと、必ずそこにいる。 私は彼の座るベンチから離れた場所に座り、食事や読書をするのだ。 その間、彼はノートパソコンを開いて何かを打ち込んだり、本を読んだりしていた。時には眠っている事もある。そんな時は雰囲気が幼くなり、ずり落ちそうな眼鏡が微笑を誘っていた。 始めは互いに、まるで気にもしてなかった。彼に至っては、こちらに気づいてさえいない様子で、自分の事だけ集中していたのだ。 だがある時、目を休ませようとしたのだろう、彼がふと視線を上げ、その拍子に私と視線が絡んでしまった。 私はつい目を逸らして、視線を落とす。 すると、クスリと笑い声が聞こえた。上目遣いで彼を盗み見ると、悪戯っ子のような笑顔の欠片を残しながら、視線を手元に戻すところだった。
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