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それから、彼の事が気になって仕方がないのだ。
もう一度、今度は正面から彼の笑顔が見たい。
そう思いながら彼の顔を盗み見るのだが、彼が顔を上げそうになると、すぐに視線を逸らしてしまう。
そして私の心臓は、まるで早鐘を打つかのように、鼓動を速めるのだ。
そんな事を繰り返しているうちに、青々とした葉を付けていた公園の木々は、その葉を柔らかな絨毯に変え、忙しく鳴いていた虫の声は、寒風の吹き荒ぶ音に掻き消されていった。
彼の顔すらまともに見る事が出来ないまま、気づけばもうすぐ正月だ。
会社は一週間、休みになる。
どんなに寒くても、週末以外は毎日この公園に来ていた。そして毎日、彼の顔を見ていたのだ。
一週間。
私の心が何かを叫んでいる。
何かが物足りず、それは私の心に穴を開けていた。
私はそんな自分に戸惑いを感じていたが、自身が何を求めているのか理解出来ずにいた。
結局、その答えが出る事はなく、私は休みを迎えたのだった。
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