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妊娠を告げた時の彼の顔。
中絶の時、一緒にいてくれたのは、友達だった。
親には友達の家に泊まると嘘をついた。
そして彼は私を避けるようになった。
正月休みが終わり、私は暫く、公園を避けていた。
会社で食事をしたり、近くのカフェに入ったり。
だけど、そんな食事は味気なく、砂を噛んでいるかのように口の中に苦く残る。
そのくせ、彼に似た人を見かけると目で追うのだ。それが違う人だと気づくと、自己嫌悪に陥る。
会わなければ忘れると思っていたのに、日増しに彼の姿が頭に浮かぶ事が多くなってきていた。
一月も終わりの頃になると、彼がかけている眼鏡と同じようなものを、眼鏡店のショーウインドウで見かけるだけでも、胸が痛くなった。
家にいても、私は塞ぐ事が増えていったのだった。
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