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二月に入って、家で何をするでもなくぼんやりしていると、携帯からメールの着信音が聞こえてきた。開くと友達からだ。
タイトルは『もうすぐバレンタイン』。
本文を開くと、そこにはチョコレートのレシピ。
それだけ。
それだけなのに、なんだか、胸の支(つか)えが取れたような気がした。
やっぱり彼女にはバレてるんだ。
彼女の心配そうな顔が浮かび、それは笑い顔に変わると、頑張れと励ましてくれてるようだった。
私は一つ、大きく息を吸い込むと、材料を買いに外に飛び出した。
今年のバレンタインデーは火曜日。
日曜日の夜にチョコレートは完成し、ラッピングも完璧に仕上げた。
それなのに月曜日は緊張の所為か、目眩と吐き気に襲われ会社を休んでしまったのだ。
このまま今週は会社を休んでしまおうかと考えているところに、また友達からのメールが届く。
内容は『出来た?』の一文だけ。
そして、チョコレートに塗れて満面の笑顔を浮かべている友達と、その長女の写メ。
この写メを撮ったのは、きっと旦那さんなのだろう。
彼女には負ける。
そう呟きながら、眠りについた。
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