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「おはよう、諸君」
そいつは、赤いフードを被り、フェイスマスクをしていた。この頭に響くような声も、きっと音声を変えているのだろう。そいつは今、この街の上空から俺達を見下ろしている。
そして、全てはそいつの一言で始まった。
「これより、ゲームを始める」
あまりに突然の出来事にその場にいた全員が凍りつく。だが、すぐにハァ?と言う声が上がり、たくさんの人がまた歩き出そうとする。しかしその足はすぐに止まり、驚きの声が漏れた。
「う…ウソだろ!?」
それが何を示しているのかはすぐに分かった。なぜなら、俺の目の前にいる女の人の頭上に緑色のバーが現れたのだ。そこにはしっかりとHPと表示されている。さらにその上には名前も存在し、ユリとカタカナで表示されていた。
彼女-ユリさんは何を思ったか、宙を見つめながら急に自分の頬をつねった。すると、彼女のHPバーは一割ほども減る。驚くと同時に、上から説明の声が聞こえる。
「今、お前たちの頭上にはHPバーと名前が表示された。そこにはこれから他の表示も増やしていくが、まず主な表示を説明する」
そいつは興奮を抑えるためか、ゆっくりと話し始める。
「一つはプレイヤーネーム。それは初期では本名となる。変更を望む場合、利き手で逆サイドをつまみ出すモーションでオプションを開き、操作をすれば可能だ」
そいつは自分のオプションメニューを開いたり閉じたりしながら言った。
「次にその名前やHPバーの色だが、お前たちを赤、青、黄、緑、オレンジ、黒の六つの種族に分けた。お前たちにはこれから他の種族の者たちと殺し合いをしてもらう。とは言っても、ゲームに参加したがらない者が現れてもらっても困る。そこで、私からお前たちへのささやかなプレゼントだ」
と、そいつが言ったと同時にHPバーに変化があった。バーの隣に爆弾が表示されたのだ。爆弾の中心では数字でカウントダウンが開始されていた。
「そのカウントダウンは今7日間に設定されている。それがゼロになった時、その爆弾の持ち主は爆死する。カウントの補充方法は一つ。他種族の人間を殺すこと。それ以外に方法は無い。そして、種族が最後の一つとなった時、このゲームは終わる。その暁には、最後の敵を倒した者の願いを一つ、叶えることを約束しよう。何を願っても良い。内容によっては、神をも越える力を手に入れられるだろう。そう、これは-」
「-これは、神をも越えるデスゲーム」
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