Exceed God For Alive-神をも越えるデスゲーム-

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左手を上げ、右手を上げ、ゆっくりと大きく胸をそらして、そいつは宣言した。 「これは、神をも越えるデスゲーム」 その言葉は、俺に現実味を与えてくれなかった。神という字も、デスゲームという字も、今の俺の目の前の状況には全く合っていないからだ。俺の目の前の女の人ユリさんは、自分の体のあちこちをつねりまくってHPが残り四割にまで減っていたが、本人にはこれといって変化はない。不思議そうに首を傾げるだけだ。 と、そこを小さな子供が二人、喧嘩をしながら走り抜けていく。目で追うと、女の子と男の子が言い争っているのが分かった。 「お兄ちゃんのバカーっ」 女の子が男の子に飛びかかり、ポコポコと叩き始めた。 少し痛そうに、しかし笑いながら妹をなだめる男の子の頭上のHPはものすごいスピードで減少していく。 当然、その光景は周りの注目を集めた。そして、とうとう男の子のHPはゼロになった。その瞬間、今まで笑っていた男の子の顔が一瞬凍り、次いで苦しそうに顔を歪ませた。そして、そのまま焦点を失った目を宙に向け、女の子に被さるように倒れ込んだ。 「……お…にぃちゃ…」 女の子が呼びかけても、男の子は反応することなく人形のようにダラリと手を地に落とした。 その出来事は皆の頭を混乱させた。何が起こった?簡単だ。死んだのだ。ゲームの主人公がHPを全損させてしまって死ぬのと同じように。だが、ゲームと呼ぶにはあまりにも酷すぎる現状に、この場にいる誰もが同様に思った。-これは、ただのゲームなんかじゃない-と。 その後の行動は、皆が皆てんでんバラバラだった。今はもう映っていない上空の画面に向かって説明を求める者、混乱して立ち尽くす者、我先にと逃げ惑う者、死にたくないと泣き叫ぶ者、中には殺られる前に殺ろうと周りを攻撃する者もいた。だが、俺は考えていた。なぜこんな状況で冷静に思考を巡らすことが出来たのかは分からないが、俺は先刻の状況について考えていた。今、俺達の上空に不気味に広がる画面から突如現れた、この狂ったゲームの主催者、GM(ゲームマスター)の言う〝死〟とは、きっと2つの種類があるのだろう。1つは、先程のようなHPの全損による〝ゲームオーバー(死)〟。もう1つは、〝リアルの死〟。つまり、致死の傷を受けたり、病に倒れたりした時の〝デッド(死)〟。
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