2人が本棚に入れています
本棚に追加
驚いたことに、この状況でいち早く動いたのはユリさんだった。
俺よりも僅かに速く人ごみを掻き分け、女の子のところへ走り寄る。
「とりあえず、お姉さんと一緒に手近な店に避難しましょう」
ユリさんはそのまま有無を言わせずに女の子の手を引く。
「えっ!?ち、ちょっと待って!やだ!!」
女の子はユリさんの手を振りほどこうとする。
「離してっ!離してよっ!!」
俺はその女の子の側まで行くと、彼女の肩をそっと掴んで言う。
「いいか?あの怪物みてぇな蜂に刺されたくなけりゃ、近くの店まで俺達と走れ」
「でも…」
「ここは危険なのよ」
「うぅ…」
そんなことを言う間に蜂の群れは街中を襲い始めた。
「行くよ!早く!!」
女の子はそれでも動こうとしない。
そして、女の子は小さな声で言った。
「…お兄ちゃん…は?」
街中の人が蜂達によって殺される中で、この声ははっきりと聞こえた。
それは、きっとさっきの男の子のことだろう。
「…………っ。……大丈夫。…連れて行くよ」
俺の言葉に、ユリさんが驚く。
「えっ!?でも、あの子はもう…」
「俺が時間を稼ぎますから、この子達を頼みます!」
言うが早いか、俺は駆け出していた。
最初のコメントを投稿しよう!