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ブゥン。
後ろからは、蜂達が迫って来る。
よく見ると、その図体は人の頭2つ分くらいで、尻尾の針はもう、針というよりもサバイバルナイフだった。
目の前はもう黄色と黒の世界。
低い羽音の中で、落ちてた木の棒を逃げながら振り回す。
時々棒に手応えを感じるが、蜂が倒れるまでにはまだ至っていない。
それから3時間くらいはたっただろう。
俺はなんとか蜂の大群をやり過ごし、近くの橋の下で息を潜めていた。
先程逃げてる途中、木の棒で倒した何匹かの蜂は、ポーションとおぼしき物と、尻尾に生やしていた針を落とした。
背中や腕など、至る所を針で刺されて血が流れていたが、驚いたことにポーションは傷も癒やした。
もちろんHPも全快になったのだが、
「……毒…かぁー」
なんとも気の抜ける話だ。
毒が回り出したのはつい先程。俺が最初に刺されてから3時間は経っている。
しかも、これはただの痺れ毒。
「なんだかなぁ~」
これで1週間動けないならまだしも、そんなことは有り得ないだろう。もしそうだとしても、ここは水場そのものだから、生きるのに苦労はしなそうだ。
「そういえば、あの娘は大丈夫かな…」
あの小さな女の子のことだ。10歳…くらいだろうか。あの歳なら、狂ってもおかしくないんじゃないだろうか。自分の兄が、見方によると、自分の所為で死んだのだ。あの歳で冷静でいられるとは到底思えない。
ユリさんが上手くフォローしてくれたら良いけど…。
「…なんか喉乾いたな…」
芋虫のように這って水面を覗き込む。
その瞬間、
“バシャアッ”
ちょうど俺の4~5倍の大きさの、サメだかワニだかよく分からないモンスターが現れた。
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