『PROLOGUE』弓で射抜くは君ノはーと

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沈黙。 周りには風の音が聞こえるばかり……それ以外のものは、音という概念を失った。 スパンという音と共に、的に矢が突き立つ。 中たり。 ふう、今日はこれくらいかな。俺は礼をして、弓道場を出る。 「おつかれー。やっぱりまさくんは凄いね。今日だって2本しか外してないよー」 まさくんとは俺のこと。ちなみに、こいつは幼なじみで、小さい頃からまさくんまさくんと俺に引っ付いてくる変な奴。 「ううん、2本も外したんだ。本当に大事なとき、このたった1本が甲乙を決めるんだぞ」 「うん、そうだけど……」 「だから、まだまだ俺も未熟なんだよ」 どちらかというと自分に言い聞かせるように、俺は言う。奢り高ぶった時点で人間は腐り始める。そう、あいつのように……
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