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どうして、と彼は問い返す。別にここで降りるとは一言も言っていない。いや、彼自身、どこで降りるべきかも定かではないのだ。
「君は、ここが目的地なの?」
「ううん」
「なら、降りなくてもいいじゃないか」
「違うの。この列車、ここで三十分停車しちゃうんだ。綺麗な星だから、お客様が観光できますようにって」
へえ、そんな配慮を効かせてるのか。永久は見えない鉄道会社に関心する。
「どうする?」
再び、彼女は永久に問い掛けた。
すると、永久は迷わず立ち上がった。
ここに座っていても暇なだけだし、降りてすぐに列車が出発すると言う訳でもない。何より、好奇心が疼いた。それだけで動機は十分。
少女はドアを開け、廊下へ歩み出す。永久もそれに続いた。赤茶の木が隙間なく張られた床に個室と同じ様な壁の装飾、永久はなんだか自分には不釣り合いな様な気がした。溢れる高貴さを感ぜずにはいられなかったのだ。
先頭に向かってまっすぐに歩く。前の車両との繋ぎ目に、また同じ様なドアがあった。しかし、ドアノブは無い。
どうするのだろう、と永久は思ったが、少女がその前に立ってみれば、独りでにドアが開いた。まるで誰かがこじ開けてるかの様に、ゆっくりと開いていく。
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