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ドアの向こうには、窓越しよりも鮮やかな水色が一面に広がっていた。発光ダイオードよりも眩しく、それでいて目が痛くなる事もない、不思議な光がそこにあった。
少女と永久は列車を降り、改札口を抜けた。誰もいないそこは、田舎でよく見る寂れた駅そのものに見える。
駅を出ても、辺りには人らしき影がまったく見当たらない。二人の足音以外の音もない。ただひたすらに、静寂と水色があるだけだ。
光る鉱物は隙間なく地面から生えていた。大小長短様々だったが、一つ一つがしっかりと水色を発している。
「どこに行く気?」
少女の歩みは、まるで目的があるかの様に真っ直ぐだった。
「一番綺麗な所」
それだけ言って鉱物を飛び越える。永久もまた、同じように飛び越えた。
一番綺麗な所――か。
確かに、この星は永久の中で今までで一番綺麗な場所だ。それは見た目だけではない。何か雰囲気の様な、空気の様な。身体が芯から浄化されていくような清らかさがここにはある。
だけども。
視界に映る限り、その綺麗さは一様で、どこかが突飛抜けて強く光っていたり、光の色が違ったりなどとはしていない。全てが平等に美しいのだ。
甲乙なぞつけられないのに、彼女は何を以てして“一番”だと言うのだろう。
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