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「……は?」
気が付けば、彼――呉内永久(くれうちとわ)は列車の中にいた。
ぐるりと辺りを見回す。彼はこれがコンパートメント車の内部だと判断した。二人掛けの赤いシートは向かい合う様に二つ。それに、様々な動物が描かれている木製の壁、妙に厚いガラス窓とガラス張りのドアか設置してある。
何故ここに居るのか――と言う疑問の前に、彼の視点を独占したのは、窓の外の風景だった。
「…………」
永久はその景色に食い付かざるを得なかった。開いた口が塞がらない。比喩じゃなく、本当に口があんぐり、開いたままになってしまった。
その原因は――窓の外に浮かぶ、土星。 無数の氷の集まりの輪で囲まれている星。太陽から六番目に近く、太陽系の惑星の中では木星に次いで二番目に大きな星。宇宙に浮かぶ、惑星だ。
宇宙。
それを認識した瞬間、ぷちん、と。
彼の中で何かが切れた。
「……お……おお、お、落ち着け、落ち着くんだ自分!」
頭の中がパニック全開である。スイッチが入ったかの様に、彼の中の冷静さは一瞬で消え失せた。もう何がなんやら意味が分からない。頭が真っ白だ。
ええっと……と、彼は記憶を辿る。
七夕(たなばた)学園高等部の天文部部員である永久は、毎年恒例の会場に向かっていた。
会場は、学園の近くにある小さな山――織姫山(おりひめやま)だ。まあ、山と言っても丘に近いが、それでも公式には、立派な山として認められている。
望遠鏡持参係と任ぜられた彼は、友人から頂戴した望遠鏡を荷台に、山の頂上を目指しママチャリを漕ぎ――。
そこまで来て、彼は、はっと思い出す。
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