第一夜 銀河鉄道《ジャンヌダルク》

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 少女はまた言葉を紡ぐ。 「《ジャンヌダルク》って言うの、この列車」 「――へえ、そりゃまあ、強そうだね」  フランスの聖少女ジャンヌダルク。マリー・アントワネット並みに有名であろう、フランスを救った女騎士である。  だからと言って、宮沢賢治と同じく、少女はその女騎士の存在を知らないようだった。永久の「強そうだね」と言う言葉に、また少し首を傾げていた。なんでそう思ったの? とでも言いたげだ。  違和感が否めないが、彼は続けた。 「アンドロメダ線って言うのは?」 「アンドロメダ銀河にあるブラックホールから、ノートルナイトまでの路線。この列車だけ、通ってるの」 「アンドロメダ銀河……ブラックホール? それ、本気で言ってるのかい?」  有り得ない。子供じゃないんだからさ。そもそも、ブラックホールだと吸い込まれるだろ。  永久は呆れ半分でそんな事を言う。到底信じられない。確かに、窓の外に広がる景色は宇宙としか考えられないが―― 「…………」  ふと、少女の顔が悲しげな色を浮かべる。期待していたものが一気に崩壊した様な、少しの絶望をも見せる悲しみ。  しかし、それは永久が気付かぬ間に消えた。またすぐに何も現さない、無表情へ戻る。 「もうすぐ見えるよ、違うものだけど」
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