第一夜 銀河鉄道《ジャンヌダルク》

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 ――違うもの、とは?  果たして一体、なんなのだろう。  そう思って一秒待たず、部屋中に別の声が響いた。 『間もなくリリームス、リリームスに到着致します。乗車中の皆様は危ないですので、座席から立ち上がらないよう、ご協力をお願いします』  流暢な通る男声。どうやら、ここの車掌による車内放送らしかった。  永久は放送にあった“リリームス”が何なのか分からなかった。地名であるのは確かだが、そんな地名、聞いたことがない。銀河鉄道と言うのだから、星の名前かも知れないが、それも同じく、聞いたことがなかった。  窓の外を見る。いつの間にか、土星の姿はどこにも見当たらない場所まで来ていた。  アンタレスと同じ赤、リゲルと同じ青、シリウスと同じ白、カペラと同じ黄色、アルデバランと同じ橙色――宝石箱がひっくり返った様に、様々な色が散りばめられた名も知らぬ星の海。無数の星々は、まるで命あるかの様に魅力的に輝いていた。  少女もまた同じく、星を見つめる。まるで子を見守る親の様な、優しい眼差しを向けていた。  やがて、前方が水色の光に染まっていった。見たことのない綺麗な水色に、永久は思わず感嘆の声をあげる。 速度が段々と遅くなり、《ジャンヌダルク》は蒸気と共に高い音を車内に響かせた。それにつれて、光の正体も現れてくる。
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