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「真琴、席がもうないよ?」
兄貴に仕掛けた盗聴機でなんという映画を見るのかを把握する事に成功したのだが、生憎席が空いてない。
ったく、休日だからって映画なんて見に来るなよ暇人共が。
自分の事は棚・・・・・・いや、バベルの塔の上に置かしていただいた。
・・・・・・正直、棚をバベルの塔に変える必要性があったのか自分でもさっぱりわからない。
しかし席が無いのは困る。
どのくらい困るかというと、
『おい、~がこれから面白い事言うぞ!』
とふられるのと同じ位困る。
「すみませ~ん!そこの大してカッコ良くも可愛くもないのに、メイクとかして自分をカッコいいとか可愛いとか思ってそうなチャラい勘違いカップル二人~!」
「「あん?」」
その辺にいた前略カップルを呼び止めて、交渉に入る。
向こうは敵対心MAX。一触即発の空気だけど俺には関係ない。
「うぉっ!近くで見たら
男はめちゃくちゃカッコいいし、
女はめちゃくちゃ可愛かった!」
「そ、そうか///・・・・・・で?なんの用だ?」
流石は単細胞生物。
おだてに弱い弱い。
「これからなんて言う映画見るんですか?」
「ん?『記憶の中で生きる』だけど?」
ビンゴ!兄貴達が見るやつだ。
「実は俺と彼女でどうしても
この映画が見たいんですけど、
チケットが売り切れてて・・・・・・
彼女も全然時間が無くて、
もしもこの時間を逃したら
次会えるのはいつになるか・・・・・・
お願いします!
二倍払うんでその券を売って下さい!」
俺の真剣な態度に
しばらく相談を始めたカップル。
そしてしばらくしたら、
男の方が声を出した。
「わかったよ、二倍で売ってやる」
チッ!
良心につけこんで
原価、または無料で
もらうつもりだったのに・・・・・・
この人の心を持たないクズが!
・・・・・・俺に言われたくないか。
「ありがとうございます!」
俺は二人分、
6000円払ってチケットを受け取った。
「じゃあ頑張れよ~!」
そう言ってカップルは去っていった。
まぁなんだかんだ言っても
映画のチケットを譲ってくれた辺り、
いい人達だったのかもしれない。
・・・・・・恥ずかしいから認めねーけど。
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