最終決戦

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のは、いいんだけど…… 「……」 「……」 無言。 ただただ風が吹き抜ける音だけが静寂を切り裂く。 でも、こ、ここは頑張って僕が話さないと……! 「「あの」」 「あ……」 「えっと……」 しかし平沢さんの方もそう思ったのか、運悪く喋るタイミングが重なってしまった。 けど、今日の僕は違う。 いつもならこのままお見合い状態になるけど…… けど、今日はもう引かない! 「あの……平沢さん……ごめんなさい! この前優しくしてくれたのに怒鳴って……」 僕は深々と平沢さんに頭を下げる。 「も、もちろんいいですよ! 私こそごめんなさい……」 僕が謝ると何故だか平沢さんまで謝ってきた。 「い、いや、平沢さんは何も悪くないから……」 「でも……」 「大丈夫だから……ね?」 「……はい……ありがとうございます!」 「うん!」 「でもよかったです……」 「えっ?」 平沢さんは笑顔になったかと思うと、急に声が小さくなり俯いてしまった。 「……よかった……」 「ひ、平沢さん?」 「また……またこうやって岡崎君……と……楽しくお話が……お話ができて……」 「平沢さん……」 平沢さんは肩を震わせて時々平沢さんの足下に雫が垂れていく。 しかし平沢さんは涙を拭くこともせず、ただ泣いていた。 平沢さんはこんな僕のために泣いてくれている。 こんなに可愛くて優しい子が僕なんかのために…… 「平沢さん……」 「あっ……」 僕はそんな平沢さんの事が愛おしくて優しく抱き締める。 すると平沢さんは一瞬体を強ばらせたが、すぐに僕に体重を預けてくれた。 何度か体験したことのある細くて柔らくて暖かい平沢さん…… 僕はこんなに素晴らしい宝物を失いかけていたんだな…… そう思うとまた目の奥が熱くなる。 本当に……本当に仲直りできてよかった…… また友達でいられる。 ……いや、友達じゃ……だめなんだ。 僕はゆっくりと平沢さんから体を離し、顔を見つめた。 平沢さんもそれに応えるように僕の事を見つめてきてくれる。
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