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翌日。
私達は荷物をまとめ、さらに北上する事となった。
桜は何度見ても感動する。
次はどんな桜に出会えるだろう?
「お世話になりました」
宿の人にお礼を言い、私達は外に出る。
何か大切な事を忘れてしまった感覚があるが、それは夢でも見たのだろう。
『次はどこだ?』
「このまま山沿いに進む。そうすれば次の目的地だ」
夜琥と酒呑の会話を聞きながら、私はふと、瓦礫の山を見る。
一体誰が不法投棄したのか分からないが、田舎の道の隅にゴミの山は酷いと思う。
「不法投棄はどこでもあるんだね」
「そうだな。まぁ、致し方ないだろうて」
頼光が溜息を吐き、私は妙に引っかかる瓦礫の山を見た。
この瓦礫……本当はもっと重要な役割を持っていた気がする。
どうしても思い出せないモヤモヤ感に軽くイライラしながらも、私達は瓦礫の山を素通りした。
たとえ私達が瓦礫の撤去をした所で、不法投棄は無くならない。
それならここは、無視が上策でしょう。
『ありがとう』
?
誰の声だ?
「夜琥、何か言った?」
『いいや、何故だ?』
「……何でも無い。空耳だったみたい」
そういうと夜琥は『人騒がせだ』と愚痴を零し、先へと進む。
ここには何も無かった。
いや、私の勘では何かあったと思われる。
でも忘れてしまう程度の事なら、すでに解決済みだろう。
きっとどうでも良い事だ。
「さて、次の山へGO!!」
私がノリノリで叫ぶと、みんなが笑う。
うむ、平和だ。
最後に私は、不法投棄された瓦礫の山を見る。
心なしか瓦礫も微笑んでいるように見えたのは何故だろう?
そんな事を思いながら、私達は先へと急ぐ。
夜の山は危ない。
散り始めた桜が、空を舞う。
こうして私達の旅の1ページは刻まれたのだった。
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