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そんなこんなで。
私は妖怪から家族を護るために、家族から離れて一人になりました。
熊を素手で倒せる、と囁かれているお母さんなら妖怪と戦えそうですが、お父さんは絶対に無理。
細身で争いを好まない人だから、妖怪相手に平和的解決を求めるに違いない。
……こう考えると、私ってお母さんの子供だな。
『何をボーっとしている。伽羅は我に怒られたいのか?』
「いえ、滅相もございません」
私の思考回路をぶった切ってくれたのは、赤茶色の髪をした青年。
私と同い年くらい見える外見だけど、この人こそが空腹で動けなくなっていた狐である。
俗に俺様系と呼ばれる、一部の女子に好まれるタイプだ。
『こんな辺鄙な田舎に留まる事になったのは、伽羅が原因ぞ。少しは反省しろ』
「申し訳ないです、ハイ」
私の右足には、丁寧に包帯が巻かれている。
骨に異常は無いけれど、歩くのには人手を借りなければいけない程度のケガ。
『雪道ではしゃいで転ぶなど、子供でさえせぬ』
「いや、人生一回は雪道で転ぶと思う」
『黙れ。我はこの土地が好かぬ。早く治して去るぞ』
元々ワガママ全開の狐……名前を夜琥というのですが、今回は特にワガママが酷い。
この土地は妖怪が多いらしく、神経質な夜琥にとっては居心地がとてつもなく悪いらしい。
尤も、それを逆に楽しんでいる方もいらっしゃるのですが……夜琥の場合は、楽しむという発想すら思い浮かばないと思われる。
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