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「相楽に失礼だろ。ただいまぐらい言え」
相楽とは、私の兄の名前。
「うるさいなぁ!あんたに関係ないじゃん!てか、男同士とか気持ち悪い!」
その日の私は、生理のせいかイライラしていた。
だから、説教みたいにされると余計イライラが積もり、兄の友達に八つ当たりをしてしまい、挙げ句、最低な一言をいってしまった。
言ってから後悔し、恐る恐る彼を見ると、切なげに微笑んでいる。
その表情に、私の罪悪感がさらに募る。
「ちょっとした戯れだ。いつも俺が相楽に無理矢理キスしてる」
あ……
胸が締め付けられる。
痛い、苦しい。
「…悪かったな、相楽。あと、相楽の妹も」
男はそれだけ言うと、私の頭を撫でて帰っていった。
「……相楽お兄ちゃん」
「え、何?」
気まずい雰囲気を悟ったのか、挙動不審になる我が兄。
「あの友達、何て名前?」
「……ああ。片桐篤」
片桐 篤。
カタギリ アツ。
頭の中で相楽お兄ちゃんの言葉が反芻する。
彼の……片桐篤の切なげな表情が頭から離れない。
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