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今日がいつなのか分からない。
そもそもいつからここにいるのだろう?
白いベッドの枕元には『エルザ・トランシルバニア』と記されている。
それは、個を表すものなのだろうか。
それならば自分は、エルザという名前で表される存在なのか?
自分ではよく分からない。
エルザと名前で呼ばれた事など一度もない。
ならば、これは何なのだろう?
読み書きは教えられた。
言葉も教えられた。
だが、考えるなと言われた。
何度も打たれ、殴られ、反抗は罪だと叱られた。
だから、中身はからっぽだ。
窓のない部屋の、白いこのベッドだけが居場所。
ベッドが2つの部屋。
隣のベッドに、新しいからっぽが来た。
前のからっぽは、いつの間にかいなくなっていた。
『アエル・クーリエ』
部屋の灯りが消えると話しかけてきた。
「私はアナタをエルザと呼ぶわ。私の事は、アエルって呼んで」
アエルは色んな事を教えてくれた。
明るいうちは、からっぽなフリをしていたけど。
外の世界には色んな人間がいる事。
四季がある事。
朝と昼と夜がある事。
そして、人間には感情がある事。
そして、今が1999年の9月だと教えてくれた。
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