一・夏の記憶

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切れ長の目に栗色のショートの髪がよく似合う。 よく喋る愛乎とは対照的に、睦月は落ち着いた雰囲気で口数も少ない。 二人は荷物をパイプ椅子に置き、何やら大きな風呂敷包みを長テーブルに乗せた。 「何コレ?」 「どうせお昼もここでしょ?二人でお弁当作って来たんだ」 愛乎が言い、睦月は頷いた。 「へえ、それはいいね」 またドアが開いた。 「賑やかですね」 「おいクレバーつかえてんだよ!早く入れ」 「分かってますよ」 敬語で話す物腰の穏やかなのは、呉羽(くれば)ウィンフィールド。英文科の臨時講師で、ハーフらしい。華奢で黒髪に青い瞳が女生徒には人気だ。 無骨な感じの方が、三神玲於(みかみれお)7回生だという噂だが、定かではない。色素の薄い髪と肌が日本人離れしている。 この二人が何故毎回、こんなサークルに来るのかはよく分からない。 「やあ、ちょうどお昼だ。2人がお弁当を作って来てくれたそうだよ」 「へえ、美味そうだな」
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