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現在、立正は会長。二人の間に生まれた三人の子供のうち、長男・政臣(マサオミ)が社長となっている。
米沢仁史のその後は不明。
そして今も、世界のどこかで研究は続けられていると言う。
「以上が僕が調べた、ネット上に流布されている『とある製薬会社の噂』だよ」
「俺が知ってんのも、大体そんなだっけな」
三神先輩は、伸びをしながら言った。
睦月は無反応に近い。ただ…じっと親父を見ている。
「研究は、成功したんでしょうかね?」
クレバー先生が言う。
「さて…どうだろうね」
「するわけないわよ…そんなの」
愛乎は呟いた。
「で、今日のネタは?」
俺は、わざと軽い調子で訊いた。
「ああ、これだよ」
親父は、PCの画面を指す。
俺達は画面の見える場所に移動した。
そこには、数点の画像が表示されていた。
山中にある何らかの建造物を、様々な角度から撮ったもののようだ。
それは塀に囲われた…
俺は、血の気がひくような感覚をおぼえた。
冷水を浴びせかけられたように、心臓が早鐘を打つ。
「コレなに?まさか…」
愛乎が聞く。
「そう。さっきの話にあった、ミドウ製薬第九研究施設。通称ヨネザワ研究所…だと噂されている写真だよ」
「…本物なの?」
「うーん、どうかな…撮影者は不明だし詳細も分からないんだ」
木々の間にひっそりと佇む、塀に囲われた長方形の建物。
窓の数から二階建てである事が分かる。
門扉の横にテンキーらしきものがある。
しかし、戦前に建ったと言うには…比較的近代の建物に見える。
本当に『ヨネザワ研究所』なのかは怪しい。
「それで、どこにあるんだ?」
「諸説あるんだが…K県の山中というのが、最も有力かな」
K県…確かそれは戸籍謄本で見た、俺の死んだ親父の故郷だった。
「遠いな」
「行くんですか?」
クレバー先生は、三神先輩に聞いた。
「そりゃ行くだろ」
三神先輩は、不適に笑った。
「睦月は?」
「レオたんが行くなら」
睦月は淡々と言った。
「霧村さんはどうします?」
「みんなが行くんなら、行くわ」
愛乎は俺を見た。
行かないとは言えない気がした。
「…じゃあ、俺も行く」
愛乎は、何故か神妙に頷いた。
「教授、いつにしますか?」
クレバー先生は、親父に聞いた。
「まったく君らは、好奇心旺盛だね」
親父は苦笑した。
出発は明後日になった。
俺の中で、得体の知れない何かが蠢いていた。
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