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「たっくん!アカリね!しょうらいあいどるになるの!」
「アカリはうたがへたっぴだし、はずかしがりやだからムリだよ」
「ぜ、ぜったいぜったいぜーーったいなるもん!」
「じゃあ、アカリがあいどるになれたら――」
舌足らずな話し声が2つ。頭の中に響くように染み渡っていた。
これはまだ俺が小さい頃の記憶だ。たしか、俺がまだ6歳になってるかなっていないかってくらいの時のだ。
当時、近所にアカリという少女が住んでいた。
とある理由で写真など記録に残るようなものがないため、今じゃ顔すら思い出せないが、人形のような長い金髪と翡翠色の目だけはよく覚えている。
日本人とたしかイギリス人のハーフだったか?彼女の母親が外国人だから、その血を濃く継いだのだろう。
彼女は自分が周りの子とは外見的特徴が違うというコンプレックスから人見知りであったが、唯一の遊び相手であった俺には気を許してくれていた。
そんな昔の記憶を何故今さら思い出したのかわからない。つい最近まで彼女の存在すら忘れかけていたというのに――。
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