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真っ白な吐息が、空気に溶け込んでは消えていく。
早朝の東京は、すでに車の通りがおおく、いつも通りの1日が始まろうとしていた。
「へっくしっ!あ゙ー、さむい。 地球温暖化の傾向にあるって嘘なのかよ! なあ?」
鼻をすすり、気だるげに歩いている少年、桐谷拓巳はいつも通り愚痴をこぼしていた。
頭の上のアホ毛も歩くごとに小刻みに揺れていて、主人同様寒さを訴えているようにも思える。
「そうね。 でも逆に寒冷化も起こってるのよ? 外国じゃ夏なのに雪が降る地域もあるって話だし」
そんな彼に突然話をふられた少女は慌てた様子もなく律儀に博識を披露して返す。
「それより、地球温暖化とか言うなら息を止めてくれるかしら? 朝からハアハアいいながら白いのを撒き散らさないでくれるかしら? 盛りのついた犬じゃあるまいし」
ただし、口は悪かった。
「深雪もいい加減人様の前で誤解を招くような言い方はやめたらどうだ? お兄ちゃん、悲しいよ」
「だれがだれのお兄ちゃんなのかしら? 誕生日が3ヶ月早いだけで年上面しないでくれる?」
深雪と呼ばれた少女、安住深雪は、苦虫を潰したような顔をしていう。
いや、そんな顔されると本当に悲しくなるのだが……。
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