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しかし、こう見えて俺と深雪は心底仲が良い。
9年間、風呂に入る時のような個々のプライベートの時間以外はほとんど一緒に過ごしている。
深雪はいつもあんな感じだが、決してあれは俺の事が嫌いというわけでなく、彼女のデフォルトがあれなのだ。……多分。
「そうだ、またシスターから手紙が来てたわよ?」
深雪が唐突に話を変える。
「シスターも心配性だな。 まだ1年も経たないのに何回目だよ」
「今回の手紙で19通目ね」
2人でため息混じりの苦笑を浮かべながら、シスターの困り顔を思い出す。
――シスター。
神奈川に住む俺たちの第2の母のような、また、姉のような存在である。
俺たちは2人とも、それぞれの理由で孤児になった不幸な身であった。そんな俺たちみたいな子をたった1人で育ててくれて、さらにわざわざ俺たちを東京の高校にまで入れてくれた恩人だ。
9年間一緒にいたが、歳や本名はいまだに分からず、外見も初めて会った頃から全く変わっていない。 一時はみんなで魔女とか言って困らせてたこともあった。
そんな彼女からの手紙は1ヶ月に2回は必ず届く。
元気?おこづかいは足りてる?こっちはみんな元気ですよ。
内容は要約すればいつもこんな感じだ。今回も、多分こんなだ。
「俺たちももう高校生なのにな」
「拓巳って高校生だったの?」
「おい、同じクラスだろ……」
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