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結局、今日の学校はいつも通り友達と話したり、深雪に小言を散々言われ、夏海には弁当のおかずを掠められて――もちろん仕返しに鼻をおもいっきりつまんでやった――気がつけば終わっていた。
まさに平凡という言葉が似合う1日だった。
「ほんじゃ、ばいならー」
ブンブンと手を振りながら走り去る夏海。
いつの世代の人間だよと内心思いつつ、帰りの支度をする。
途中で学年主任の怒鳴り声と夏海の悲鳴とも笑い声とも似つかない声が聞こえた。
廊下は走らないようにしような。
「拓巳、今日バイトよね?」
今度は深雪が相手のようだ。
「ああ、そうだけど。 買い出しか?」
「いや、別にそうじゃないんだけどね。 そ、その……あの…………がんばって……ね」
「ん? 最後なんて?」
モジモジしながらだんだんと声が小さくなっていく深雪だったが、聞き返すといきなり襟首を掴みあげ、
「なっ、なんでもないわ! 無駄口叩くなら早く行きなさい!」
顔を赤くした深雪が噛みつく勢いで怒鳴ってきた。
というか呼び止めたのはそっちじゃないか。
まあ、口論じゃ深雪には一生勝てない自信があるから口に出さないけどな。
「んじゃ行ってくるよ」
「あ、うん。 いってらっしゃい」
自分で言っといてなんだが、学校で「いってきます」、「いってらっしゃい」はちょっとおかしいかなと思ったが、気にせずバイト先へと向かった。
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