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家から最寄の駅まではバスを使っている。 まだ春を感じられない季節にため息を零すと、白く濁った。 ポケットに両手を入れ、肩を竦める。 出来るだけ外気が肌に触れないよう、マフラーに顔の半分を埋めてみたが、隙間から滑り込む冷たさに、テンションは下がる一方だった。 バス停に着くと、すぐにバスが来た。 「うぉ!ラッキー」 俺はマフラーの中で呟いた。 もうすでに身体がカタカタ音を立てて震えていた。 順番にバスに乗り込む。 外とは比べものにならない暖かさに、ほっと息をつく。 おお~!席空いてる! 他の乗客が全員座っても、まだ席が余っていた。 迷わず俺は一人掛けの席に座る。 普段の時間では座れることなど皆無だったため、余計嬉しさが込み上げる。 これか!? これが『早起きは三文の得』か!? 単純なのは自分でも分かっていたが、あっさりとテンションが上がった。
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