回廊

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「全てはあの二人のために。……僕達は、それを実現するだけです」  用が済んだのか藤島は立ち上がり、部屋の隅にある、電子レンジに電卓が取り付けられたような小さな箱型の機械の所へ歩いていく。  指紋を照合すると、ピーという機械音と共に機械の扉が開いた。藤島はポケットから石ころを取り出して中にある皿のような台に乗せる。 「慣れは怖いですね。僕にも、東さんのように山本教授の技術を嫌ってた時期があったと思うと」 「私は別に嫌いじゃないです。ただ、あの二人の為に私達までダメになってしまうのは、本末転倒だと思うだけです」  背を向けたままの藤島の言葉に、東は口を尖らせた。曖昧な返事をし、藤島は扉を閉めるとすぐ隣の電卓のボタンを三、四回ほど押し、すぐに離れた。パッと内部の明かりが点灯し、石ころを乗せた皿がくるくると回り始める。 「セットの場所と日時は?」 「三日後の七時三十分ちょうどに食堂です。東さんは再調整をお願いします」  そう言うと藤島は腕時計を確かめ、まだ動いている機械をそのままに部屋を後にした。部屋のドアが閉まると同時に機械も静かになった。東は黙って機械の扉を開ける。 「…………」  中を覗き込み、東は胸ポケットに入れてあった手帳に“成功”と書き込んだ。すぐ傍に倒れていた木の椅子に座り、丸っこい字で「東」と書かれたシールが貼ってあるパソコンを起動した。
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