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覚悟を決めるように隣のレジへ並ぶ。名札を見ると[研修生]の文字が目に入る。
つまり、この店で俺を知らない女性だった。
「お弁当 温め致しますか?」
「い、いや、いいです‥‥」
研修生らしくぎこちない動きで弁当を袋にいれる。
「ご会計 498円になります」
1000円札をカウンターに起き、会計をすまそうとする。ここまでは順調だ。最大の難関は次の…
「502円のお返しになります」
『来た!!ここが勝負!』
恐る恐る手を出し小銭を受け取ろうとする。女性店員もマニュアル通り小銭が落ちない様に反対の手を添えてくる。
『このままだと接点は無い!行けるか!?』
淡い期待もそこまで…研修生らしく小銭が俺の手から落ちそうになる。咄嗟に女性店員が添えていた手で小銭と一緒に俺の手まで挟み込むようにして小銭の落下を防いだのであった。
結果、俺の手はこの女性店員の両手で挟まれていた。
「っ!!!!!!!!!!!!!!」
全身から流れる汗、一瞬で退く血の気、声になっていない音声が口から漏れそうになる。必死にその音声を手で塞ぎ逃げるように店を走り出ていった。
俺の居なくなった店内で女性店員は呆然としていた。
「あ~気にしないでいいよ‥‥」
「で、でも「私、何かしましたかね?」
「いや大丈夫。マニュアル通りだから気にしないで」
「逃げるように帰っていきましたよ!?」
女性店員は自分に非があるのではないかと必死になって男性店員に確認している。
まぁ、普通はお客が逃げ出すなんてないから、そりゃ焦る。男性店員も仕方ないなと感じで女性店員を諭す。
「…あのお客さん…極度の…女性恐怖症なんだ」
これが最大の弱点であった…
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