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どんな表情をしているのか、後ろからは分からないが、長く艶やかな黒髪が印象的だった。
「綾川彩音です」
初めて聞く声。
しかし、初めて聞いた名前ではない。
「好きなものも、苦手なものも沢山あります。以上」
「次、上野」
教師も、クラスメートも何事も無かったかのように次へ進む。
少女も役目を終えたと言わんばかりに、椅子に腰を下ろす。
受け入れられるはずのない自己紹介。
それが受け入れられる程に、彼女は有名だった。
Absolute zero。
-273℃の視線は彼女に関わろうとするものを瞬時に凍りつかせる。
誰も彼女に近づけないし、彼女も近づかない。
彼女はいつでも孤独に咲き誇る。
七十五日経っても消えなかった噂。
そして、噂は現実として認識されたようだ。
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