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ホームルームが終わると同時に俺は席を立つ。
松山が面倒なことを言い出しそうな気がしたからだ。
勘違いの可能性もあるが、勘違いじゃない可能性もある。
面倒事に巻き込まれてから後悔しても遅いのだ。
「おい、待てよ」
追いかけてきた松山に肩を掴まれた。
「嫌だ。俺を巻き込むな」
引き離そうと手を払いのけると、今度は正面に回り込んでくる。
「まぁまぁ。とりあえず、聞けって。綾川のこと何だけど」
「……」
「アイツが他人に無関心なのは知ってるよな?」
「無関心かは知らないけど、冷たいって話しは聞いたことがある」
「綾川の自己紹介を聞いただろ。いつもあんな感じ。本当に必要最低限のことしか話さなくてさ。話す必要もないと思ったら無視するし」
「そこまでだったのか」
「俺も何度か話しかけたけど、全部無視された」
「お前との会話は不要なものだと思われたんだな……。ってか、何度も話しかけてたのかよ」
「だってさ、普通あんな綺麗な子がいたらお近づきになりたいと思うだろ。思うよな?」
「俺はそんなこと思わねぇよ。綺麗な子が居たら綺麗だなーって思ってそれで終わりだよ」
「お前……枯れてんのな……」
松山が憐れみを含んだ目で俺を見てくる。
衝撃の事実に気づかされてしまった。
俺は枯れていたのか……。
「ま、まぁ、俺が枯れてるとかは置いておくとして」
残酷な現実からは目を背けることにした。
「話が見えてこないんだが。俺にそんな話をしてどうしたいんだよ?」
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