ホットとクールの出会いの話

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「お前の友達、変なやつ多いだろ。綾川とも友情を築けそうじゃん?」 「ユニークと言え、ユニークと」 確かに個性的な面々ではあるが、変なやつ呼ばわりされるのは許せない。 「ってか、校内一の変態が人のことを変人とかいってんじゃないよ」 「誰が変態だっ!」 「お前だ!」 俺がビシッと指差すと、松山はそれをマトリックス避けで躱し 「俺は変態じゃない」 キメ顔で言った。 いや、キメ顔で言われても……。 さっきのマトリックス避けで制服のボタンがとんでいったがいいんだろうか 「俺は変態じゃないっ!」 「わかったから、制服のボタン拾ってこいよ」 「うわ、やべっ。姉貴に殺される!」 四つん這いになってあたふたとボタンを探す姿は涙をさそうものがあった。 「……仲良くなれるかな?」 「あん、何が?」 まだボタンを探している松山は話についてこれていない。 仲良くなれるか? 自分自身に問いかける。 友情なんてものは、共有する時間のなかで自然と築かれていくものだと思う。 でも、意識して距離を縮めようとするのも間違いじゃないはずだ。 問題があるとすれば、話すきっかけがないってことぐらいで…… それが最大の問題なわけだが解決策なんてどこにもなかった。 「あっ、これか?」 廊下の隅に落ちていたボタンを拾うと、松山に投げて渡す。 「おぉ、さすが夏芽。お前は命の恩人だ!」 俺に抱きついてこようとする松山を、ステップを踏んでかわす。 松山の姉のことを思うと、この喜びようもわからないではない。 「昼飯は何を食べようか?」 「俺は素うどん」 「へっ、始業式から節約か?保身にはしりやがって」 「ならお前は何を食うんだ?」 「肉うどん」 俺はキメ顔でいった。 そのあとは昼飯談議が続いて、綾川の名前がでることはなかった。
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