14th secret

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「………けっ…こん?」 武田の粘りっ気のある顔は、驚愕に染まり、真っ青になり、怒りが宿りワナワナ震える。 その変化は…まさに妖怪七変化。 一方の馬越は「言い切った」とばかりに、希望に満ちた瞳で爽やかな顔。 16という年若さを差し引いても、彼の素直な気質はなかなか類を見ない。 単純で純粋な彼は、これで変態が退くと思ったのだろうか? 「…………………お相手は?」 「…はい?」 「お相手はどこのどなたですか? ………まだ蕾だった君という名の華を散らした不届き者は?」 後半は小声だったので馬越は聞き取れなかっただろうが、あいにく耳の良い私にはまる聞こえ。 蕾? 華? …おえっ。 そんなことを思っていれば、警戒という言葉を知らぬ馬越が、密先生の名前を口にする 「ああ! 医者であいざ…むぐっ!?」 ………前に、なんとか阻止。 「…沖田先生?」 武田が驚いたように呟いたので、思わずそちらに振り向けば。 「まさか馬越くんのお相手は、沖田先」 「違います。」 気持ち悪い予想をした武田の言葉を速攻で遮る。 その拍子に塞いでいた手が外れた馬越が潤んだ瞳で騒ぎ出す。 「おきっ…た先生、なんですか急にっ!?」 またお気楽って言おうとした? お気楽は君の方だからね。 馬越はわかってない。 馬越への武田の異常な執着も、陰湿な嫉妬の行方も。 密先生の盾となると決めた矢先。 まさかその相手が変態になろうとは。 きっと馬越のことだ。 密先生への恋を隠すことなく、邁進することだろう。 そしてその内に。 密先生の存在は武田の知るところとなってしまうだろう。 …密先生にも注意を促しておこう。 そう思いながら、立ち上がる。
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