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気が付くと、叶は暗闇の中にいた。
「ここ……どこ?夢なのかしら…」
周りは見えないのに、何故か自分の姿ははっきりと見えている。
不思議そうに叶が辺りを見回していると、小さな光が飛び込んできた。
秋月叶はごく普通の女子高生だった。
ただ一つ、叶の双子の弟である愁が一年前から行方不明だという点を除けば。
一年前の今頃、秋月家に衝撃が走った。
必ずどんな用事があっても遅れる場合には連絡を入れ、ましてや友人宅に泊まる等という事をした事がなかった愁がいっこうに帰って来なかったのだ。
友人・知人、全てに連絡をとったが行方は全く掴めなかった。
捜索願いを出し、近所にも呼びかけた。
(愁は必ず元気な姿で見つかる)
そう思っていた。
しかし、一年経った今でも手掛かり一つ見つからなかった。
小さな光はだんだんと大きくなっていった。
まるで、叶目掛けて近付いて来ているかのように。
光が近付くにつれて、叶には不安な気持ちが生まれた。
(あの光に捕まっちゃいけない。早く逃げなきゃ)
叶は光とは別の方向へ逃げた。
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