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叶が自分が(おそらく)来た方を見ると、小さな光がこちらの方へ近付いて来ていた。
叶が嫌な感じを受けた光だった。
男は他の男達に指示を出し、何やら準備をさせている。
そして叶に向かって
「ちょっと寝ててもらうぜ」
そう言いながら叶の口元へ何やら薬のような丸いものを入れた。
思わず飲んでしまうと、急激な眠気が叶を襲う。
深い眠りにつきながら、叶の耳に男達の会話が聞こえる。
「おい、タスク。やつら、もうあんなに近付いてるぞ?」
と、男達の一人が言った。
「大丈夫だ。こっちの方が足が速い。行くぞ」
声から推測するに、タスクというのが叶に話し掛けてきた男の名前らしい。
タスクは叶を抱き抱えると、馬のような動物に乗ってその場を離れた。
その時既に叶は夢を見ていた。
少し懐かしい夢を。
ス……と叶の目から涙が出て来た。
突然いなくなった愁との思い出が甦ってきたのだ。
はじめての大喧嘩や誕生日、海で遊んだ事や迷子になった事。
楽しい事、つらい事を共に過ごして来た二人なのに……。
愁が行方不明になった時、叶は自分の体が半分になったような衝撃を感じた。
それほどこの二人は仲が良かったのだ。
叶は誰かはわからなかったが、叶が涙を流している事に気付いたタスクがそっと涙を拭ってやった。
その間にも、男達はいずこかへと向かって進んでいた。
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