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「──その後“人魚秘め”と呼ばれるようになりました」
そういいながら青年は持っていた本を閉じて話を締めくくる。
「……何か悲しいお話しだね……」
「可哀そうだね……」
「シャオ兄ちゃん、どうして人魚姫は好きって言わないの?」
シャオと呼ばれた青年は周りに集まっている子供達の感想に苦笑する。
(あまり子供向けの話しじゃないな……これ)
人魚姫が国の王に恋をし、想いを告げずに泡になり消えていく話し。
話しの載っている本の蒼い表紙を指でそっとなぞる。
【最初で最後のキミへ】
表紙のタイトルにはそう書いてあった。
この本はあの日とある人物から貰ったモノ。
『キミはきっと──』
赤い髪の魔法使い。
妖艶で嬉しそうな笑みを浮かべながら魔法使いは呪いの様な予言を吐いた。
『────────』
「シャオ兄ちゃん?」
子供の呼び掛けにハッとして顔を上げると皆が心配そうに此方を見ていた。
それに対し安心させる様に一度笑い、
「……人魚姫はきっと好きって言えなかった」
だって、
「好きだからこそ、なおさらな──」
その先にあるのが幸せではないから。
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