2.空が割れた日

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そう思った瞬間、 私の首元にまわっていた腕は 離れて、同時に背後へと押しやられ、 入れ替わりにその人が素早く動いて 倒れる間際、その人の切っ先が 暗闇に輝くのを見た……。 絶叫と呻き声が響き渡る。 土の上に倒れこんだ私は、 思わず耳を塞ぎたくなる 現実に、体すら動かすことも出来ずに そのまま腰を抜かした。 人を斬ったばかりの その人は、無邪気な微笑みを携えて 近づいてくる。 笑っているのに、 その目は何も笑っていない。 私も殺される……。 覚悟して、目を閉じたとき 私の目の前に手に持った刀を突きつけた。 「見たよね……」 クスリっと笑いを含んだ声が 静かに告げられる。 ゆっくりと顔を見上げた その人は……まだ幼さの残る とても綺麗な青年だった。 その視線に浚えられたまま、 何かに暗示でもかかったかのように、 小さく頷いた。 「悪いけど、  ついてきてもらうよ。  それとも……  今すぐ、ここで殺されたい?」 その声に、 慌てて首をフルフルと振ると その人はゆっくりと刀を鞘へと戻した。 「行くよ」 先に歩き始めたその人が、 ついてこない私に気が付いて戻ってくる。
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