2.空が割れた日

6/8

560人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
「君……僕に殺されたいの?」 相変わらず、おどけるように 笑いを含んだ言い方で紡ぐのに、 目だけは全く笑っていなくて。  「あっ、  ……あの……。  腰が抜けちゃって立てないんです。  だから……」 「立たせてくださいって?  もう……めんどくさいなー」 そう言いながらも、 私の前に立つとその手を差し出してくれる。 その手をゆっくりと掴み取ると 思った以上の力強さで私を支えながら 引き寄せる。 立つことが出来た私は、 その人の胸の中に抱きとめられる形で 立ち上がることが出来た。 「あっ……、  有難うございます」 その人の腕の中から 離れて、謝罪する。 見れば……見るほど ……綺麗なんだけど……。 「ほらっ、  さっさと動いて……」 促されるままに、 その見慣れない町を歩いていく。 その人の歩幅を追いかけるのに 必死で、歩き続けて辿りついた場所は 時代劇に出て来そうなお屋敷。 「総司。  出掛けていたのですか?」 屋敷に入ってすぐ、 穏やかな声が聞こえる。 「えぇ」 「そちらは?」 「あぁ、見られたんですよ。  人殺しの瞬間を」  「総司、それはいけませんね」 「その場で口を封じても良かったんですけど  とりあえず、近藤さんに指示を仰ぎたくて」 「連れてきたと言うのですね」 耳を澄ませて聞いて捉えられる名前、 総司……って。 まさか、 「沖田総司っ!!」 思わず叫んだ私は周囲を見渡して 慌てて、口に手を当てた。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

560人が本棚に入れています
本棚に追加