3.真っ白な世界 

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「……晋作……さん?」 「あっ、あぁ。  名前、覚えたのか?」 その人の言葉にゆっくりと頷く。 「晋作。  少し話してみたけど  覚えてないよ。   この子……」 「そうか……。    久坂、お前の介抱の仕方が  悪かったんじゃねぇか」 「僕の責任にするの?  晋作なんて夜中に寝てる僕を  叩き起こして、この子を強引に  僕に預けただけじゃなかった?  助けろって」 晋作さんと義助さんは、 私なんかお構いなしに二人会話を続ける。 「あっ、あの……。  すいません」 そんな二人に謝るしか出来なくて。 「君は悪くない。  助けたのは俺だ。  そこに辿りついて俺が見つけたのも  何かあったんだろう」 男らしい顔をしたその人は、 真っ直ぐに私を捉える。 「あぁ、晋作。  これを返しておかないと……」 義助さんがそう言って立ち上がると、 手に何かを持ってゆっくりと近づいてきた。 「そうだな。  君を助けたときに、  君が身に着けていたものと  握りしめていたものだ」 そうやって、目の前に広げられたものは 全て記憶にないもので。 見たこともない形をした布。 今、私が着せてもらっている 衣服とは違ってる。 その隣にある袋の中に入ったものも 全て……身に覚えのないものばかりだった。
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